2015年2月25日水曜日

9. 日常のコミュニケーションをターゲットとしたリハビリテーション:失語症者とその重要な他者との対話における会話を変化させることができるのか?

日常のコミュニケーションをターゲットとしたリハビリテーション:失語症者とその重要な他者との対話における会話を変化させることができるのか?

 

目的:失語症の治療が,失語症のある患者を重要な他者との間の会話を変化させるかどうかを調べること.
研究デザイン:失語症患者を含む会話を目的とした少数の介入研究をレビューした.すべて一例報告.
研究の環境:研究に必要不可欠な評価は,通常は家での環境でなされるような,2人での会話を1回以上,録音か録画で記録していること.これらの研究の介入は,参加者の家や,その他の治療室のような環境で行われた.
参加者:レビューした研究のすべてで,参加者は失語のある患者と重要な他者でたいていは配偶者.
介入:すべての研究で治療では行動介入の形式で行い,相手と失語症患者の会話で,会話の解析評価によって明らかになった会話行動のフィードバックを与えることである.資料や記録,議論,または録画のフィードバックが用いられた.参加者が会話における失語症の影響とうまくつきあえるための示唆を与え,会話でこのような戦略を練習する機会を提供した.
主要評価項目:介入後,失語症患者と他者の会話を,介入前と同じやり方で1回以上記録した.介入でターゲットとした行動における変化に関連した会話の解析を行った.介入には,話題の開始や言語の誤りの修正がある.
結果:それぞれのレビューした研究は,失語症患者と重要な他者との間の会話が会話において変化し得るというエビデンスを提示した.いくつかの研究では,エビデンスはそもそも定性的で,介入後の会話行動で観察された変化の型である.研究によっては,変化の定性的な解析と定量的な解析を組み合わせて,より強いエビデンスを提供した.
結論:失語症の患者を含む会話をターゲットとした介入が変化を生じさせることができるというエビデンスがある.将来の研究では,一例報告以上の研究で,変化のより強固で定量的なエビデンスを出し,変化が維持されるというエビデンスを提供すべきである.



失語症に対して,言語機能を改善させる介入ではなく,他者(significant others,主に配偶者)との会話全体をターゲットとした介入のレビューである.

ポイントの1つは会話分析という手法である.これにより,言語ではなく,会話の質を評価できるようになったことで,このような介入が可能になった.もう1つは,失語症者だけでなく,会話の相手にも介入するという点である.それにより,失語症者が躊躇したり遠慮したりしないで,会話全体がスムーズに進行できるように他者を指導することの有用性を解説している.

会話はコミュニケーションであり,うまく進行するかどうかは相手側のスキルにもよるということは,何も失語症に限らず日常的に経験することである.失語症者の発語を促す指導だけでなく,心理面も重視したこのような介入はいずれ必ず重要視されていくと考える.


全文訳のpdfはこちら
パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください(大文字・小文字は区別して,記号は含めず,10文字目まで).
例:Heaven Helps Those Who Help Themselves. -> HHTWHT

0 件のコメント:

コメントを投稿