2016年5月30日月曜日

クリッピングを受けた未破裂脳動脈瘤の患者の長期予後−外科的に治療された脳動脈瘤の患者では脳血管イベントが増大する Neurosurg Rev 2013









クリッピングを受けた未破裂脳動脈瘤の患者の長期予後−外科的に治療された脳動脈瘤の患者では脳血管イベントが増大する




















抄録
我々は,未破裂脳動脈瘤の短期および長期的な全体の結果を後方視的に調査した.1991年から2008年の間に,我々の施設で,166年の患者に嚢状動脈瘤の頚部クリッピング術を施行した.患者はその後,くも膜下出血やその他の脳卒中,動脈瘤の再発,脳血管疾患での死亡,全死亡,危険因子の発生を経過観察した.手術の合併症は14人(8.4%)にみとめ,手術による死亡は2人(1.2%)だった.手術での死亡例2例を除いた164人中,144人(87.8%)について3年間の経過観察の情報を得ることができた.男性49人,女性95人.平均年齢58.5歳,平均観察期間は7.9年.8人が観察期間注意に死亡した(肝不全1例,腎不全1例,自殺1例,脳内出血2人,くも膜下出血1例,脳卒中後の肺炎2例).したがって,死因は脳卒中と脳卒中の後発合併症である.10人の患者に症候性脳血管イベントが12件生じた(脳梗塞7例,脳内出血4例,くも膜下出血1例).したがって,未破裂脳動脈瘤のクリッピング後のくも膜下出血の年間リスクは0.085%である.さらに,このような患者での脳卒中の年間リスク1.06%で,この発生率は一般人口よりも高い.この研究では良好な手術成績が確認できたけれども,未破裂脳動脈瘤のクリッピング後の脳卒中の年間リスクは一般人口よりも高かった.外科的に治療された未破裂脳動脈瘤の患者に対しては,脳動脈瘤の再発を検出するための長期的な検査と,脳卒中の予防のための適切な管理を行うべきである.





 未破裂動脈瘤に対するクリッピング術の成績についての文献.

 過去の研究に比べ直接の合併症が少ないことはさすがであるが,長期成績としてくも膜下出血以外の脳卒中が多いというのは興味深い.動脈瘤が発生すること自体に,何か脳血管の脆弱性を生じて脳卒中が起きやすくなるような共通の病態があるのかもしれないし,手術で開頭することでの侵襲も影響している可能性もあるような気がする.

 リスクファクターの管理は,当然といえば当然ではあるが,このような治療後にはより注意を払う必要があるだろう.

全文訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字・小文字を区別して,記号は除いて10文字目まで.Long-termは2語としてカウント)
例:A word to the wise is enough. -> Awttwie

2 件のコメント:

  1. 論文のご紹介ありがとうございます。筆者の穂刈です。コイル塞栓術と違い、クリッピングでは動脈瘤が再発するリスクはかなり低いのですが、長期フォローしていくと、意外と他の脳卒中(脳梗塞など)を起こしている患者が多いことに気づき、調べてみたものです。長期フォローの重要性、およびリスクファクター管理の重要性について述べました。論文にはnが少ないので部位別には書きませんでしたが、中大脳動脈瘤に特に脳卒中発症が多かったです。動脈瘤の成因もmulti-factorですから、遺伝的な要素が強いものと(若年女性の内頚動脈瘤などはわりと遺伝的に血管壁が弱い?)、後天的要素の強いもの(HT,smokingなどの影響が強いもの)があるとは思いますので、脆弱性よりは後天的要素の合併により、動脈瘤も発生しやすいし、脳卒中も発生しやすいのかなとは個人的には思っています(僕の他の論文で中大脳動脈瘤と脳卒中合併が多いことを書いたものもあり:The impact of atherosclerotic factors on cerebral aneurysm is location-dependent: Aneurysms in stroke patients and healthy controls J Stroke Cerebrovasc Dis Oct;23(9), p2301-7, 2014)。基本的に臨床医の論文は、臨床的に気付いたり感じたりしたことを調べて、なんらかのメッセージを述べる形になることが多く、science的に厳密にみるとbiasがあるだとか言われてしまうかもしれませんが、日常診療の延長だと思っています。クリッピング後にそのまま脳外科管理で降圧薬などの外来処方継続などする場合もよくありますが、血圧すら気にしていない患者とそのまま患者の血圧すらきかずにDo処方診療しているレベルの脳外科医もたまにいますので、彼らへの警鐘のつもりです。

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  2. 筆者からのお言葉ありがとうございます.後半,リハ病院でもありがちな光景なので耳が痛いです.

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